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猿の遺言

大晦日も差し迫った師走の下旬。バイトに明け暮れたツケとして、 俺は年賀状書きに追われていた。その際、数十年ぶりに、俺はある者と再会をすることになる。

猿の遺言(前半)

大晦日も差し迫った師走の下旬。

バイトに明け暮れたツケとして、
俺は毎年恒例の年賀状書きに追われていた。

とは言ってもほとんどの人へは、
メールで「明けましておめでとう」。

元旦になったらケータイのボタンを、
ポチッと一押しで一斉送信すればいい。

ハガキが何枚届いたかで、
一喜一憂していた小学校の頃と比べて、
若干味気のなさを感じるが、
メールにはメールの良さがあっていい。

なにより筆無精の人間にはありがたいものだ。

とはいうものの、
それでもいくらかは書かなければならないのが年賀状。

ビニール袋をガサゴソあさると、
俺はいくつかのはんこを取り出した。
偶然立ち寄った雑貨屋で買ってきた消しゴムはんこだ。

イラストはもちろん来年の干支、猿。

「へぇ、よくできてるよなぁ。
本当に手で作ったのかなぁ」なんて、
独り言を言いつつ、
買ってきたはんこたちを何気なく眺めてみる。

猿と言えばそうだ。思い出した。

それは今から何十年前の秋のこと。

まだ小学生だったボクは、
家族で栃木県の日光へ旅行に出掛けた。
お馴染みのいろは坂に差し掛かった時だ。

手持ちのゲームにも飽きた俺は、
渋滞にはまり動けなくなった車から降りることにした。

真っ青な秋晴れの空。
彩りよく紅葉をしている山々。
澄みきった涼しい風。

いつもの街にはないモノが、
そこにはたくさん溢れていた。

そんなボクの視線にもう一つ飛び込んできたのが、
一匹の猿だった。

(つづく)

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